本研究は、プラズマにより励起生成された活性種相互の反応素過程を解明し、半導体薄膜形成の精密制御に応用することを目的としている。本年度は、混非晶質半導体シリコンカ-ボンに着目し、励起活性種のダイナミックスの解析と、膜堆積機構の解明に重点をおいて研究を進めた。1.〔励起活性種のダイナミックス〕 マイクロ波励起によるプラズマを用いて原料ガス(シラン、炭化水素)を分解し、生成された活性種のダイナミックスを、発光分光分析、質量分析、プラズマ探針、の各手法を用いて解析した。SiHn、CHn(n=1〜3)のラジカルの他にSi_2H_6やC_2H_6などの安定分子等が生成される。活性種の生成・消滅を、電子衝突による解離反応と二次反応とに分けて解析した。ガスの解離度を求めると同時に、二次反応速度定数を用いてラジカルの寿命を算出した。2.〔膜堆積機構の解明〕10^<-3>秒程度の長い寿命を持つSiH_3、CH_3ラジカルが主としてシリコンカ-ボンの堆積に寄与することが判明した。気相反応で生成されたSiCH_5の寄与も無視できない。堆積時の表面反応において、活性なH原子が、膜のエッチングやHの引き抜き等重要な役割を果すことが分った。原料ガスの水素希釈率を増すことにより、重合化が抑制され、SiならびにCの水素化率が低減できた。以上の結果を基にして、原料ガス成分比、水素希釈度、マイクロ波電力等を制御することにより、堆積膜のシリコン1カ-ボン組成比、光学的禁制帯幅、Si・C原子の水素化率等の膜物性を精密に制御できる見通しが得られた。本年度の研究により明らかにされたシランと炭化水素の解離度の大きな差を克服するためには、それぞれを独立に制御して分解し所定量の励起活性種を生成して膜を堆積するハイブリッドプラズマ援用気相堆積法が有用であると考えられ、今後の研究を進展させたい。
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