研究概要 |
近年の核融合プラズマ加熱におけるマイクロ波加熱において発振部や計測制御部とトカマク真空容器を結ぶ導波系の途中に容器部の真空を保ち外界と遮断するための隔壁部が必要となる. 通常その遮断のためにはマイクロ波に対して透過性のよい誘電体板が用いられ, それらを含む隔壁部は真空窓と呼ばれている. そのような真空窓においては誘電体板中の電力密度を下げ加熱を避けるため断面積をその部分で大きくするピルボックス(Pi11-Box)形状が有効となる. しかし, それらの系の複雑な3次元構造は電界の局所的集中や共振モードを生ずるため, 加熱系の最大電力を決定する要因となっておりマイクロ波加熱の今後の一層の大電力化に向けて真空窓の最適構造の研究が不可欠となっている. 本研究では3次元電磁界の時間応答解析手法として, Maxwell方程式の等価回路表示と波動伝搬のBergeron法による時間軸上での定或化を利用した空間回路網法を用いて, 上述のピルボックス型真空窓の解析を行いその特性を明らかにした. すなわち矩形導波管励振による円筒形ピルポックス型真空窓では, 誘電体板の局所的加熱を生ずるモードが想定されているが, 実験的には実際の損失により変化した電磁界特性しか観測されず, またこれまでの解析的手法では損失のある場合の計算は困難であった. 空間回路網法の全電磁界成分を用いたベクトル解析により, 誘電体損失, 入出力導波管を含めたピルボックスの統一的解析が実現され, これまで解析できなかった上記モードの特性の厳密な解析, 特に損失による変動を明らかにすることができた. また導波管と真空窓接合部で生ずる電磁界特性の影響を明らかにすることができた. これらの結果について現在電子情報通信学会論文誌に投稿中である. 今後これらの系全体の統一的解析を発展させ, 開口アンテナ部, プラズマを含めた解析を行っていきたい.
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