研究概要 |
本研究は, M系列やGold系列などよりも相関特性の優れた実数値の擬似雑音符号を開発し, 耐妨害性, 秘話性を従来よりも一層高めたスペクトラム拡散多重伝送方法の基礎を確立することを目的としたものである. 本研究は来年度も予定されているが, 本年度の研究実績を以下に要約する. 1.実数多値直交擬似雑音符号の開発 実数直交擬似雑音系列の一般表現を奇関数の位相定数を有する余弦級数で与え, 系列の絶対値, 相互相関関数の絶対値の一般的な評価法を明確にした. 長さNが素数の系列として, 2次剰余から導かれる2値, 3値, 5値の系列, 単項式の位相定数から導かれる3〜N値の系列の組, 長さNが合成数の系列として4値の等振幅系列などを生成する方法を明らかにした. 3次単項式からの系列の絶対値と相互相関関数の絶対値がそれぞれ2, 2/√<N>以下であることを見出し, この性質を利用して, 系列の絶対値と相互相関関数の絶対値が小さく, シフトOで直交する素数および2のべき乗の長さの系列の組を生成する方法を明らかにした. 2.スペクトラム拡散多重伝送方式の研究 交信局の遅延時間が一定の範囲内に分布しているとき, シフト0で直交する系列のデューティ比を下げて, 遅延時間内を時分割多重し交信局で符号分割多重する, 無干渉のスペクトラム拡散多重伝送方式を提案した. この方式は, 完全に同期したとき周波数及び電力の利用効率がほぼ100%になる. 実際の符号伝送のために系列の交流化の方法も示した. 現実にディジタル相関処理が適用できる例として, 気中超音波領域のパルス圧縮レーダシステムを構成し, 長さ127の系列に対する相関出力のサイドローブが-50dB以下となる結果を得て, 実数多値直交擬似雑音系列による多重伝送方式の見通しが得られた.
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