本年度は、等価性判定の応用に重点をおいて以下に述べる研究成果を得た。まず一方が空スタック受理式のDPDAで他方が実時間空スタック受理式のDPDAに対し、従来より開発してきた直接的分岐アルゴリズムによる等価性判定アルゴリズムを改良して一層の効率化を実現した。更に、このDPDA対に出力機構をつけた変換器(DPDT)に対する等価性判定アルゴリズムについて、自由群の性質を利用することにより一層の単純化・効率化に成功した。これによりDPDAの等価性判定手法をDPDTに対しても拡張することが一段と容易になった。 グラフにおける極大・最大クリーク抽出の効率のよいアルゴリズムを考案し最大時間計算量の評価を与えた。次に上記結果と関連して、確率プッシュダウンオートマトン(PPDA)の受理する言語のクラスに関する考察を行った。DPDAは非決定性プッシュダウンオートマトン(NPDA)の非決定性遷移に確率を付与したものである。等価性に関連して、PPDAとNPDAによって受理される言語のクラスが等しくないことを示した。等価性判定アルゴリズムの応用と関連して、ニューロンライクな素子を用いて、離散的システムを学習により自動構成する効率的な方法を提案した。従来のバックプロパゲーションによる学習アルゴリズムをKullback誤差関数を用いて効率化し、更に、最大誤差が出たときだけ学習を行うMax型の学習法を新たに導入し、従来型の学習アルゴリズムに比べて安定で早いアルゴリズムを得た。
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