本研究では、高度な並列処理システムのVLSI化を実現するため、VLSI向き計算機アーキテクチャの提案、およびそのアーキテクチャの有効性を確かめるため、アーキテクチャを仮想的に動作させるハードウェア・アルゴリズムを提示する。特に、大規模化の容易なアレイ構造に限定し検討を加えた。その結果、次の事項が得られた。1.格子結合形プロセッサアレイにおける大域通信路の必要性を回路面積と計算量の両面から検討を加えた結果、N点離散フーリエ変換等の処理において局所通信路のみのプロセッサアレイが有効であることが判明した。2.専用処理向きの計算機アーキテクチャとして設計手法の確立が急がれるシストリックアレイがある。ここでは、3重ループプログラムで表現される問題をシストリックアレイ上に自動的に埋め込むため、正射影変換手法を提案し、適用例として緩和法を取り上げ有効性を確めた。3.パターン認識分野でパターン照合法として非常によく用いられ、有効であるダイナミック・プログラミングがある。このプログラミングを2.で提案した手法に基づき、2種類のシストリックアルゴリズムを設計する。一つは、使用するハードウェア量に制限を加えないアルゴリズム(HADP)で、もう一つはハードウェア量に制限を加える、実際的規模に固定したアルゴリズム(HADPS)である。HADPSは外部から入力されるパターン系列の長さに関係なく動作するため、連続単語音声認識へも容易に適用できる。4.格子結合プロセッサアレイに大域通信を必要とする問題として、N個のデータの最大値、最小値あるいはl番目に小さいデータを見つける問題がある。これらの問題に対し、分割可能なグローバルバスを持つプロセッサアレイを用いると、他のグローバルバス形態を持つアレイと比較し、面積有効にVLSIチップ上に実現できることが判明した。
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