本年度の研究では以下のことを行った。 1.セパレ-トベクトル量子化を用いた雑音に強いHMM音声認識システムの構築。 従来音声の動的特徴を考慮したHMM音声認識システムとして、ケプストラムの時間変化を従来のHMMに加えたセパレ-トベクトル量子化HMMが提案されている。このシステムは2種類の異なるパラメ-タを別々にベクトル量子化し、HMMに入力するものである。 本システムはセパレ-トベクトル量子化HMMの手法を雑音環境下の音声に適応できるよう、音声信号を低域通過、高域通過の2種類のフィルタを通した結果を別々にベクトル量子化し、この値をHMMへの入力として認識を行うものである。低域と高域の通過フィルタの出力を利用することは、周囲の雑音による発声の変形と、周囲に存在する雑音の両方に対して効果がある。 本システムで、計算機シミュレ-ションにより10数字の不特定話者に対する実験を行った結果、通常のHMMによるシステムに比べ、5〜15%認識率が向上した。また、実際の騒音環境下(食堂、自動車車内)による認識実験の結果では、7〜16%の認識率の向上がみられ、本システムの有効性が確認された。 2.ニュ-ラルネットによる音の識別 ニュ-ラルによる雑音の識別の実験を行った。識別に用いた音は救急車の音、消防車の音、パトロ-ルカ-の音、白バイの音、白色雑音、自動車のエンジン音などである。これらの識別は他の雑音が混入していない状態であれば、極めて良好に識別できる。しかし、他の雑音が存在する状況では識別はかなり難しく、これからの研究課題である。
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