初年度の62年度では主として理論的検討と基本的なグラフィックツールの開発を行ったのに対して、今年度は、実際にワークステーション上に各種CADシステムを構築した。主要なものを以下に示す。 (1)バイポーラLSIの配線設計:この問題は、マンハッタンパス問題に対するリプスキーの解法と線分の挿入・削除を動的に管理するデータ構造により理論的に効率よく解けることを示し、簡単化したモデルに対して、区分木と二分探索木を用いたプログラムを開発した。従来の方法を単純に拡張すると頂点数nの2乗に比例する時間が必要になってしまうが、この方法ではn log nに比例する程度の時間で十分である点が特長である。 (2)素子配置問題:この問題はレイアウトの良さを決める上で非常に重要であり、従来から数多くの方法が提案されている。代表的なものは素子間の結合度をグラフに表現し、結合度を保つように平面上の点に写像する方法を考案し、幾何モデルの上で最適な2分割を求める効率の良いアルゴリズムを開発し、幾つかの小規模なデータに対して計算機実験を行い、その有効性を確かめた。現在は、素子の大きさをも考慮できるように拡張しようと考えている。 (3)自動コンパクション:シンボリックレイアウト法とドッキングさせることによって、より使いやすく、きめの細かいシステムを構築した。対話的なシステムとするために、区分木と二分探索木を用いてデータを動的に管理するようにし、応答時間を短くすることに成功した。 本研究では、区分木と二分探索木を主要なデータ構造として用いたが今後、他のデータ構造についても計算機実験を行っていきたい。
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