研究概要 |
情報社会の発展にともない, 超高速光通信や超高速光情報処理システムの実現が望まれている. 最近, このような光システムを実現するために, 材料の非線形光学効果の利用が大変有望と考えられ始めている. 特に, 3次の非線形相互作用によって生ずる位相共役波(Phase Conjugate Wave)は, 光連想記憶, 光メモリ, 光演算, 光信号処理などにおいて重要な役割を果たすことが期待される. しかしながら, 従来の位相共役波の発生は, 主として, チタン酸バリウム等の材料が用いられているため, 応答速度が遅く, かつ光デバイスの主役である半導体との集積化が困難であるという問題があった. 本研究では, このような問題を乗り越えるために, 半導体における効率的な位相共役波の発生の実現を目標とし, 半導体量子井戸構造における3次の非線形光学効果の物理の解明, および共振器構造を有する半導体量子井戸(量子井戸レーザ)を用いた高効率な位相共役波の発声技術に関する研究をおこなった. まず, 半導体量子井戸構造の非線形光学効果の究明を進めた. すなわち, GaAs系半導体量子井戸構造における3次の非線形光学効果, 特に量子井戸に対するドーピング依存性, イオン注入効果を理論的に検討し, 効率よく位相共役波を発生させるための条件・構造を議論した. 次に, 共振器型量子井戸構造における位相共役波の発生を実際に行った. 共振器構造(レーザ構造)を用いることにより, 強い非線形効果が生じ, 高効率な位相共役波の発生の可能性がある. ここでは, GaAs系量子井戸半導体レーザを用いた. その結果, 増幅率50dBという非常に高い増幅率を達成することに成功した. これは位相共役波発生技術の実用化という観点から非常に意義深い.
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