研究概要 |
本年度の研究実施計画は, 1.電子線逆行問題手法による微小領域強磁界分布の再構成アルゴリズムの開発, 2.電子ビーム偏向観測システムの設計および画像化・計測システムの構成, そして3.微小領域強磁界分布計測の基礎実験, の3項目からなっていたが, 各項目ともほぼ当初の計画通りに実施することができた. これらの成果の一部をすでに, 昭和62年度の電子情報通信学会信越支部大会および秋期応用物理学会学術講演会で口頭発表している. つぎに, 各項目毎に, その研究経過および成果などをまとめておく. 1.に関しては, 電子ビームの磁界偏向投影データから次に述べる手順で磁界分布を再構成するアルゴリズムを新に開発した. ステップ(1)磁界中の電子軌道は2次曲線で近似できると仮定し, 磁界偏向投影データから近軸軌道方程式を用いて直線光軸軌道に沿っての磁界分布を計算する. これを全方位について行ない磁界分布の初期値を求める. ステップ(2)これらの初期値をもとに空間的な可変重み付けを取り入れた反復法を用いて最終的な3次元磁界分布を推定する. 磁場分布が既知の解析モデルを用いてコンピュータ・シミュレーションを行った結果, 本アルゴリズムによって3次元磁場分布が精度よく再構成できることを確認できた. 2.および3.に関しては, 市販の走査型電子顕微鏡に試料微動装置および電子線の偏向量計測装置を組み込んで計測システムを実際に構築し, 3次元計測の基礎となる諸特性を計測した結果, 所期の計画通りミクロン・オーダの精度で磁界分布が計測可能なことが確かめられた. 現在, 磁界分布が既知の試料を用いて, その磁界分布の3次元再構成実験の準備を進めている.
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