研究概要 |
微弱電波を用いる構内無線通信において, 安定で高品質の通信方式を実現する技術の確立が望まれる. 構内, あるいは室内の限定空間領域内の電磁界強度を一定化し, 領域外への漏洩を抑える技術, 及び室内マルチパス伝搬等の通信阻害要因の検証と改善に関して, 本年度は以下の成果を得た. 1.セクター指向性をもつ固定局アンテナ・・・室内ユーナ部と壁に設置する固定局用アンテナとして, 優角コーナレフレクタアンテナを開発した. これは二枚の導体平板をコーナー状に優角(180°より大きい角)で組合せ, その稜線に平行に, 垂直ダイポールアンテナを置いたアンテナであり, 水平面内90°あるいは180°の範囲でほぼ一様であり, それ以外の範囲では弱い指向性, セクター指向性, を持たせることができる. 導体板とダイポールアンテナの大きさ, コーナー開き角などの最適化を実験的に行い, MM(Moment Method)とGTD(Geometrical Theory of Diffraction)を応用した理論解析により実験の裏付けを行った. 2.通信阻害要因の検証と改善・・・本学構内の同一フロアにある二つの実験室に置かれた二つの情報端末の移動局間で, 1, 2GHz帯パケット通信実験を行い, TNC(Terminal Node Controller)のARQ(Automatic Repeat reQuest)機能によって, 通信阻害の三要因:マルチパス伝搬, 偏波特性, 人体の影響について調査した. 送信側からのフレームが誤りなく受信されたときに受信側から送り返される確認通信のフレームを送信側が受け取ったとき, 通信が成功したとし, 一定時間にわたって通信成功確率を種々の伝搬環境で測定した. 垂直偏波を用いると成功率が高かった. 次に, 二つの移動局アンテナ間で直接通信するのではなく, 電送線路で結ばれた二つの固定局アンテナを介して通信を行う実験を行い, 移動局間距離が数十m以上のとき通信が改善されることを確認した.
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