研究概要 |
前年度に引き続き、無線LANの構築を志向して、電波利用技術の脆弱性克服技術を開発することを目的として研究を行った。無線LANにおいては利用者端末のアンテナが室内の任意の位置にあっても安定な送受信が保証されることが望まれる。しかし、室外への電波漏洩を抑えた室内における電磁界は壁、床、天井あるいは什器類によって多重反射され、振幅は定在波分布し、ちょうど市街地における移動体通信のマルチパス伝搬に起因するフェーディングと同じ問題が存在する。この問題を解決するために、先ず実際にどの様なフェーディングが発生するかを把握するため1.2GHzの周波数を用い、2.5m×2.7mの平面内の電界強度分布を測定した。その累積分布から、送信アンテナを見通せる地点ではライス分布、見通せない地点ではレーリー分布であることが分かった。次に4.3m×6.32m×2.77mの大きさの一室を無線LANを構築する室と想定してダイバーシチ受信によるフェーディング改善効果の実験を行った。一つの壁に、前年度の研究で開発した180°セクター指向性を持つ優角ユーナレフレクタアンテナを送信アンテナとして設置し、対面する窓のブラインドの開閉、送信アンテナ見通し線上の遮閉板の有無の計4種の場合について(1)2本のモノポールアンテナを用いた空間ダイバーシチ受信(2)垂直モノポールとターンスタイルアンテナを用いた偏波ダイバーシチ受信(3)4方向指向性ユーナレフレクタアンテナを用いた指向性ダイバーシチ受信の実験を行った。(1)では2本のアンテナ間隔を半波長以上にすれば相関係数は0.6以下となり、ダイバーシチ効果が認められた。(2)では送信アンテナの向き(電界の向き)が垂直方向から30°〜40°回転したとき相関係数は最小値0.3をとり、ダイバーシチ効果が最大であった。受信電力累積確率10%値におけるダイバーシチ利得は4枚をもつ(3)が最大で約9dB,以下(1)(2)の順でそれぞれ級7dB,2dBが得られた。
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