研究概要 |
周期構造系に沿って伝搬する相対論的電子ビームによる誘導放射と自然放射の特性を解析した. 主要な研究成果は, 次のように要約される. 1.断面が円形で導波管型の遅波構造内を管軸方向に加えられた有限の静磁界に沿って伝搬する中空の相対論的電子ビームによる誘導チエレンコフ放射の問題を解析した. 円形コルゲート導波管, 同軸コルゲート導波管, 及び誘電体装荷導波管のそれぞれについて空間電荷チエレンコフ放射とサイクロトロン・チエレンコフ放射の最大増大率を計算し, いずれの放射に関しても遅波構造として同軸コルゲート導波管が最も有効であることを指摘した. また, いずれの遅波構造についても, 放射を最大にする最適なビーム速度が存在すること, サイクロトロン・チエレンコフ放射の増大率は空間電荷チエレンコフ放射のそれに比べて1桁程度小さくなることを明らかにした. 2.完全導体からなる回折格子の上を伝搬する板状の相対論的電子ビームによる自然放射の問題を特異摂動法を用いて解析し, 電子ビームに付随した速い空間電荷波と遅い空間電荷波に対する放射効率と放射指向性を詳細に議論した. その結果, 最も大きな電磁放射を与える最適な電子ビームの厚さと位置が存在し, 特に遅い空間電荷波に対しては最適な電子密度と電子速度も存在することを明らかにした. さらに, 回折格子長が十分に大きい場合には, 遠方放射界は遅い空間電荷波の最低次のモードによる漏洩放射によって支配されることを指摘した. 3上記2.の放射系では, 自然放射の他に回折格子に束縛された固有の電磁波モードと電子ビームの結合による誘導放射も存在する. しかし, この誘導放射の解析に摂動法は適用できない. 現在, 自然放射から誘導放射の領域にわたって遷移領域を含めてFull-wave解析が可能な数値解析の研究に着手しており, 良好な結果を得ている.
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