音声認識あるいは画像の解析、処理においては、それらの前処理から認識、その他の知識情報処理に至るまで、フ-リエ、ウオルシュなどの変換を通じてコンピュ-タに膨大な記憶と計算処理容量を要求しているのが普通である。しかも、当初に考えられていた“近い将来コンピュ-タ上で解決し得る"との予想に反して、次々と新たな事象、知見の存在が複雑に加味され、従ってそれらを導入、処理する必要性からコンピュ-タは益々大形化、高速化へと要求されている。この為、完全実時間処理、及び装置規模の小型化などは程遠い。 そこで我々は、人力信号に含まれる全ての高調波の振幅、位相の情報を含んだ時間関数としての余弦信号を、同時にそれぞれ独立に得る完全並列法を提案し、さらに一チップIC化が可能なスイッチトキャパシタで実現する事を試みた。以下、得られた諸成果について列挙する。 1)従来の離散フ-リエ変換の出力を、位相情報を有する基本周波から最高周波数に至る高調波の余弦時間関数として得る方式を提案。この場合、逆変換はそれぞれの出力を加算するだけでよい。 2)上記に基ずいて、64ポイントフ-リエ変換回路をスイッチトキャパシタ回路で実現。これは基本周波数から最高高調波まで31ケの位相情報を含めた時間関数として同時に得られるので、それぞれ独立に処理し得る。 3)未知の入力信号から、フ-リエ変換装置が起動し得るよう、基本周期を実時間で抽出し得る装置を開発。 4)音声の一次元変換を二次元にまで拡張し、画像処理の実時間処理への基礎を与えた。 5)認識処理についてはニュ-ラルネットワ-クを同じくスイッチトキャパシタ回路で導入し、今後の展開への基礎を与えている。
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