研究概要 |
1.閉鎖回路方式による酸素摂取量連続計測装置は, 水を入れたガラスU字管水位計で接続した二つのアクリル箱からなり, 一方に被検卵を, 他方に圧力及び温度補償用の無精卵を置き, 恒温槽で保温した. 卵が酸素を消費し, 排出した炭酸ガスは吸収剤で吸収されることによる水位の変化をフォトトランジスタで検出, 水位レベルを一定に保つようマイクロコンピュータで純酸素を送り込む注入ポンプの速度を制御し, 酸素摂取量の経時変化を表示する. 2.38°Cの定常環境温度を日令12〜19日と破殻期の胚について測定(卵温と環境温度との差をΔTiとする), 次いで, 卵温のステップ応答を計測し, 冷却時定数を求めた. これより卵の熱コンダクタンス(G)を算出したところ日令に無関係にほぼ70mW/°Cの値を得た. 一方, ΔTiXGとして評価される産熱量は日令と共に増大するが, 12日目で35mW, 14日目で倍増し, 17〜19日でほぼ一定となり約130mWの結果を得た. 定量した卵のG値から, 環境温2°Cの低下で消失する熱量は産熱量をすでに上まわっていることがわかる. 従って, 例えば環境温度10°C低下の負荷を与えて代謝応答をみても, 温度に依存した化学反応として生ずる応答しか得られないことが予測され, 生理反応はマスクされてしまう. そこで, 冷却代謝応答に生理的な代償反応があるかを調べるために, 0.5〜1°C/hrの冷却速度で負荷を与える方式を決定した. 3.この徐冷却方式により, 鶏胚においては約18日を堺に微弱ながら生理的代償反応が現われることを明らかにした. この反応はふ化することにより増強されるが, 卵殻から脱出することは必要条件にならないことを見い出した. 4.卵のG値の測定を鶏卵及び鶉卵の生きている胚と無精卵について, 空気中及びHe環境中でも行い, (1)卵の内部熱抵抗は冷却速度に対して影響を及ぼす因子であり, (2)この因子には血流が関与しており, (3)その割合は大きい卵程高くなることを明らかにした.
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