研究概要 |
光波利用によるヘモグロビン濃度計測装置, 透析患者のオブザーバ, 循環血液量推定アルゴリズムを組合せることにより, 透析治療時の総循環血液量推定法の開発を目的としている. 循環血液量の初期値に関しては, 体重からの概算値でも実用上差し支え無いが, 個人差や治療間の食事等による違いが存在するため, 各患者ごとに初期血液量を推定することが望ましい. 簡単な患者モデルを基に構成した簡易オブザーバを用いて循環血液量の初期値推定を試みる. 循環血液量の初期値(Vb(O))を推定する場合には, モデルと患者との出力誤差に修正ゲイン(ke)を掛け, これをモデルのVb(O)にフィードバックすることによってVb(O)の修正を行う. 治療開始1時間程度では透析液濃度が血液量の変動に及ぼす影響が非常に小さいので, 循環血液量の初期値Vb(O)の推定はこの手法により十分行えると考えている. 臨床への応用を考慮し, モデルと患者の出力誤差の移動平均をとり, ノイズに対処した. 臨床計測を想定したシミュレーションでは疑似ランダムノイズを加え, Vb(O)の推定の度合を十分検討した. 推定に要する時間は計測ノイズの影響を受けるが, 修正ゲイン(ke)の大きさおよび移動平均により調整する. 体重が59kgの患者に対して本推定法を臨床応用した結果, 循環血液量の初期値は約3800mlとして得られた. 体重から換算した循環血液量は約4070mlと概算でき, 本推定法による推定値は良好な結果を与えている. 今後は本推定法の信頼性を高めるため, システム全体の改良を進めるとともに試薬等を用いた検証実験を行なう予定である.
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