研究概要 |
本研究の主要目的は, 各種の動的システムの二種類の表現, すなわち, 多項式表現, 状態空間表現の各々についてシステムに含まれるパラメータに関する区間安定性を吟味することであった. ここに区間安定性とは, パラメータが所与の閉区間を変動するとき, 区間の両端点でのパラメータ値における安定性が任意の他の値でのそれを保証することをいう. 対象としたシステムは次の通りである. i)連続時間線形システム, ii)離散時間線形システム, iii)連続時間非線形システム. 当初, これらのシステムに対する冒頭の二表現を取り扱う予定であったが, 状態空間表現での扱いは予想外に難行し, 結果的には多項式表現にやゝ偏ったものとならざるを得なかった. (i)に関する事項については, 本研究の早い時期にすでに相当部分の検討を終え, 一部すでに発表されている(Proc.ACC,1987). (ii)については区間安定性のいくつかの十分条件を導くとともに, 必要十分条件が得られるシステムのクラスを与えた. (iii)に関しては, 区間パラメータを含む幾種類かの非線形システムにおいては, 有限回の安定判別が必要かつ十分であることを明らかにした. これらは各々研究論文として公表あるいは公表予定である. 以上の理論的検討を裏づける目的で, パーソナルコンピュータ上でシミュレーションプログラムを開発することも当初の意図であった. これについては, 連続時間システムのシミュレータがすでに手中にあり, 別途開発の制御系設計支援ソフトウェア群に組み入れられることになっている. 今後, 研究は二つの方向で発展させる予定である. すなわち, 一つはむだ時間システムを新らたな対象として考慮することであり, 残る一つは区間安定性を一般化した概念として所与のパラメータの凸結合を含むシステムの安定性を考えることである.
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