ロバスト性を考慮することは、近年の制御工学における理論的研究に欠かすことのできない要素になりつゝある。従来の構造的な不確かさに対処するロバスト安定性研究では、システムパラメータの名目値と変動分とが与えられていて、これに対してシステムの安定性保持を図ることが主流であった。本研究の特色はこれとは異なり、変動パラメータの上下限値が何らかの方法によって知られているとして、その情報を基にシステムの安定性が保たれる条件を考えようという点である。このように、パラメータが有界区間を変動する状況でも安定性が保持される性質を区間安定性と称し、いくつかの動的システムに対してこの性質を調べようというのが本研究の目的である。考察は次の三種類のシステムに対して行われた。i)連続時間線形システム、ii)離散時間線形システム、iii)連続時間非線形システム。i)に対してはとくにむだ時間システムに焦点があてられた。区間安定性が成り立つようなむだ時間フィードバックシステムは一体どのようなものかについて検討が加えられた。また、区間パラメータをもつむだ時間システムに対して、αー安定性という強い安定概念が保持される条件が導かれた。さらに、むだ時間システムのロバスト安定測度を求める試みがなされ、成果を見た。ii)については区間パラメータを要素とするような行列、すなわち区間行列が収束行列であるためのいくつかの十分条件が導かれた。iii)に関しては、線形部分のパラメータが区間パラメータである非線形システムの絶対安定性が考察された。これによると、システムの絶対安定性を有限回だけ検証すれば十分であることが明らかとなった。以上のような理論的成果を裏付けるために、シミュレーションプログラムが構成され、これらは実際的な研究進展の支えとなった。
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