本年度はこれまでに製作してきた2足歩行ロボットと実時間処理志向の軌道生成アルゴリズム、運動学・逆運動学アルゴリズム等を組み合わせることにより、腰のひねりなどの運動を考慮した歩行動作実験のできる装置の製作と、その実験を行なった。それにより、以下のよう知見を得た。 1.進行方向と鉛直方向によって作られる平面内にしか自由度をもたない機構の2足歩行機械であっても、左右方向の運動に対して機械固有のリズムに着目し、そのリズムに同期した目標軌道の生成を行なうことによって、足踏運動や歩行運動が動的に実現できることが確認された。 2.歩行機械においてもロボットアームやマニピュレータの制御で行われているような運動学・逆運動学という座標変換を導入することにより、多様な歩行パターンの生成や作業空間での軌道の特徴づけができる点で有効であることが確められた。 3.以上示したことから、歩行制御の考え方のひとつとして (歩行運動)=(リズム)×(姿勢)+(座標変換) というひとつのあり方が導かれ、実験によりこの考え方が有効であることが確められた。 4.上記の考え方を実験装置として実現するために、パーソナルコンピュータ上に並行処理システムを実現する必要があった。本研究では共有メモリ方式により複数の計算機を密に結合し、さらに簡単なマルチタスクモニタを作成することによってその実験環境を整備した。この方法は比較的簡単なうえ、市販のソフトウェア資源が有効に利用できる点で優れていることが確められた。
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