研究概要 |
1.積雪観測レーダの作製: 厳冬期の野外に持出し可能で, 積雪内部からの反射を周波数スペクトラムとして表示・記録できるマイクロ波レーダを作製した. 6〜12GHzを10msで掃引するFM-CW方式を採用することによって, 積雪内部の境界面を検出するのに必要な距離分解能が達成できた. 今後, より手軽に運べるシステムに改良したり, 分解能をさらに向上させるためにシステム内部の不整合を極力減じ, 信号処理の方法を改善することを計画している. 2.室内実験: 冬期野外実験の基礎資料を得るため, 数種類の誘電体材料を用いて積層模型を作り, 内部の境界面と散乱反射波の周波数成分の相関を測定した. また, 同じ模型に水を含侵させて, 止水面の位置と周波数成分および含水量とスペクトラム強度の相関を測定した. さらに低温室で規格化した雪粒を用いて, 融解, 凍結の過程で同様な測定を行った. これらの実験の結果を考察し, 内部の境界面や止水面の位置を精度良く求めたり, 誘電率を計測する方法について検討を加えた. 3.野外実験: 乾雪期や融雪期に, 本研究機関の露場, 近郊の平野部あるいは北海道北部で, 自然積雪をマイクロ波レーダを使って測定して取得したデータを室内実験の結果を参照して分析した. 乾雪期には積雪内部の層構造を明瞭に表示でき, この構造は気温の変化にはほとんど影響されないことがわかった. データを分析して求めた積雪の比誘電率から密度や積雪水量を推定できることがわかった. 融雪期のデータを分析した結果は, 気温や雪温の変動に伴う積雪中の水分の増減が, 積雪の内部構造や融電率に大きな影響を及ぼすことを明らかにした.
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