ロールオン・ロールオフ型船舶は、車両が自走して荷役を行なうため、甲板うえの車両通行性を確保する必要がある。このため乾舷上の横隔壁に大開口を設ける構造がとられてきたが、近年では車両通行性に対する強い要求からの隔壁を設置せず大型の特設肋骨のみとする構造も登場してきた。これらの構造では横断面内の剛性が弱く、ラッキング変形による損傷を起こすことがある。 本研究では、基準となる箱型はりモデルを導入し、それに剛性の異なる各種の横隔壁あるいは特設肋骨を設けた場合のラッキング変形抑止機能の相違を解析的に検討し、ラッキング変形推定に有効な横隔壁および特設肋骨の主船体との相体せん断剛性を表すパラメータを提案した。このパラメータを用いて推定した変形は、実際に発生する変形を十分な精度で近似していることが対応する数値計算により確認された。 次いで、横断面内に設ける通常の横桁リングの剛性および外板の板厚とラッキング変形の関係を考察した。さらに実際上問題になる横隔壁あるいは特設肋骨とこれらの部材との複合効果を検討したところ、横隔壁を有する構造の場合には、隔壁位置でのラッキング変形はこれらの部材の影響をほとんど受けないが、特設肋骨構造の場合には、最大20パーセント程度の抑止効果を期待し得る場合があることがわかった。 最後に、横隔壁あるいは特設肋骨を有する実船についてのケース・スタディを行い、本研究によって示された横隔壁あるいは特設肋骨のせん断剛性パラメータを用いると実船のラッキング変形が精度よく推定できること、また横桁リングの剛性が船側にダブルハル構造をもつRO/RO船程度の値を持つようになると、そのラッキング変形抑止効果は無視できないことを明らかにした。
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