研究概要 |
近年ランダム疲労強度や腐食疲労強度が海洋構造物を設計する際の重要な問題点となっている. このような疲労強度特性を明らかにするためには長期間の疲労試験を行う必要がある. また, 疲労強度のばらつきを考慮に入れれば, その統計的特性を把握するためには同一条件下で実験を繰返して行う必要がある. 本研究では多数切欠き付試験片を長寿命の疲労試験に適用することによって, 大幅な試験時間(試験費用)の短縮を行おうとするものである. すなわち, 2〜3本, 理想的には1本の試験片で疲労寿命の分布を明らかにすることを目的として研究を行った. まず, 1本の試験片に数十ヶ所の応力集中部(本研究では多円孔試験片を想定した)を有する場合について, シミュレーションで検討を行った. 荷重負荷を開始後, 幾度か試験機を停止させて, そのつどき裂の個数と荷重繰返し数をチェックするというモデルを立てて, 何本程度実験を行えばき裂発生寿命分布の母数(寿命分布としてはワイブル分布を仮定)が推定できるかを検討した. その結果試験片が3本程度あれば十分な精度で寿命分布が予測できることが明らかとなった. 次に一本の試験片に60箇所のき裂発生可能な箇所を有する試験片(多数円孔付試験片)を用いて, 一定応力振幅下, ランダム変動荷重下およびブロック荷重下で疲労試験を行った. 実験の結果2〜3本の試験片で寿命分布がよく把握できることが確かめられた. また, ランダム荷重下の寿命分布の方が, 一定応力振幅下で約2.0であるのに対して, ランダム荷重下の形状母数は5.0〜4.0であった. 多数切欠付試験片を用いると試験費用は1/10以下におさまることも明らかとなった.
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