研究概要 |
複素ケプストラム及び非線形逆解析手法を用いて地震記録から断層破壊を表すインパルス列, 地震波の伝播経路の特性を表すグリーン関数ならびに着目地点近傍の局所的な地盤構造による反射, 屈折の情報を持つランダムインパルス列をそれぞれ抽出するための方法論を確立した. さらに, それらをモデル化することによって, 位相特性を考慮したより合理的な地震動の合成法について考察を加えた. 以下に, 本研究によって得られた結果を列挙する. (1)地震波の伝播経路の特性を表すグリーン関数を単位インパルスが入力したときの変位応答関数で定義し, またランダムインパルス列をポアソンホワイトノイズでモデル化し模擬地震波形を求めた. これにケプストラム解析を適用することによって, 断層破壊を表すインパルス列を分離した. その結果, 入力されたインパルスの到着時刻や相対的な強度は十分な精度で分離できることがわかった. (2)非線形逆解析手法の一つであるPowellの手法を用いてインパルスの入力時刻ごとに変化するグリーン関数を同定した. また, ランダムインパルス列の同定には, Bayesの定理に基づく同定手法を利用した. (3)1979年 Imperial Valley地震の記録を用いて, 観測波形から断層破壊を表すインパルス列, グリーン関数およびランダムインパルス列が同定した. さらに, 同定した結果を用いて観測波形を再現した結果観測波形に良く近似した合成波形を得ることができた. (4)1979年 Imperial Valley地震における断層面上のくい違い量分布をモデル化し, 断層破壊によって生起されるインパルス列を求め, これを用いて合成波形を求めた. その結果, 断層近傍の観測地点では観測波形を良く再現できることがわかった. さらに, グリーン関数の特性を波の伝播距離と時間の関数でモデル化し地震動を合成した.
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