平成元年度に実施した塩化物のアルカリ・シリカ反応におよぼす影響とアルカリ・シリカ反応によるコンクリ-トの膨張とひび割れの画像解析に関しての実験の結果をまとめると次のようである。(1)NaCl溶液に浸漬したモルタルの膨張測定とDSC-TGによるCa(OH)_2の定量分析によると、(a)NaCl溶液浸漬により膨張量は増大し、Cl-イオンによってアルカリ・シリカ反応が助長される。(b)NaCl溶液浸漬によりペシマムの位置がアルカリ・シリカ比の小さい方向に移行する。(c)膨張量が大きいときは、。アルリ・シリカ反応によって消費されるCa(OH)_2が多く、膨張量が小さいときは、消費されるCa(OH)_2が少ない。(2)海岸および建物屋上における暴露試験によると、(a)自然環境下におけるアルカリ・シリカ反応によるコンクリ-トのひび割れによる損傷度および膨張量は、外部からの塩分の供給によって大きく異なる。(b)アルカリ・シリカ反応によるひび割れ損傷度(ひび割れ本数およびひび割れ総延長距離)と膨張量の挙動との間には高い相関性が認められる。(c)自然環境下に暴露されたコンクリ-ト供試体では、まずひび割れが発生し、その後膨張が開始する。(d)画像解析によるひび割れ損傷度の評価では、ひび割れ幅の測定精度の向上に課題が残されているが、今後評価法が確立できれば、コンクリ-ト構造物の現場写真などから短時間にひび割れ損傷度を知ることができる。
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