研究概要 |
昭和62年度では, 使用荷重作用下で曲げひびわれの発生を許容する広義のパーシャルプレストレストコンクリート(パーシャルPC)はり部材の, 特に我国では重要な耐震性能に着目し, 鋼材降伏以後の変位振幅を与えた正負交番繰返し載荷下の耐荷性状ならびに部材損傷の検討を実施した. こゝでは, 最大曲げ耐力(計算値)を同一とした配筋状態でPC鋼材と非緊張の普通異形鉄筋の断面積の割合, すなわち導入プレストレスレベル(PC鋼材緊張率λ=Apfpy/(Apfpy+Asfsy),Ap,fpy;PC鋼材の断面積と降伏点, As,fsy:普通異形鉄筋の断面積と降伏点)をλ=0.4,0.7としたパーシャルPCはりおよび比較のためにλ=1.0としたフルPCはりにおいて, コンクリートの設計基準強度f′c=400,800kg/cm^2, 降伏ヒンデ領域に配置する曲げ拘束筋(矩形フープ筋)の体積比ρh=0,0.7,1.4,2.8%, 曲げ拘束筋の降伏点強度fyh=3200,14400kg/cm^2を要因とした断面幅×高さ×長さ=10×20×160^<cm>のはり供試体について, スパン140^<cm>の両端回転自由支承でせん新スパン・有効高さ比a/d≒4.0の2点集中荷重方式により, スパン中央たわみが降伏たわみの整数倍となる変位振幅のもとで正負交番繰返し載荷試験を実施した. その結果, 荷重一変位履歴ループの形状, 部材靱性, エネルギー消散能等の耐震性能と密接に関係するパーシャルPCの部材特性や損傷の程度は, 上記のλ,f′c,ρhの値に著しく影響されること, 曲げ拘束筋の配置による靱性改善効果はPC鋼材緊張率のレベルによってかなり異なること, 終局時における曲げ拘束筋の最大引張応力はfyh=3200kg/cm^2の場合にはいずれも降伏したのに対し, fyh=14400kg/cm^2の高強度鉄筋の場合には最大引張応力の値はρh/fc′の比の増加とともに増大することなど, いくつかの有用な知見が得られた.
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