研究概要 |
本研究では、使用状態の全設計荷重作用下で曲げひびわれの発生を許容するパーシャルPCはり部材(従来のIII種PCに相当)の、特にわが国では重要な耐震性能に着目し、鋼材降伏以後の正負交番繰返し荷重作用下での耐荷性状や部材損傷に及ぼす種々要因の影響をフルPCやRC部材と比較するとともに、載荷後の損傷部材の補修・補強に関する基礎的検討を実施した。 試験供試体は断面幅×高さ×全長=10×20×160cmの上下対称配筋の長方形断面はりでスパン140cmで両端をヒンデ支承とし、せん断スパン・有効高さ比a/d〓4.0の2点集中荷重方式により、スパン中央たわみが降伏たわみの整数倍となる漸増変位振幅のもとで正負交番繰返し載荷試験を実施した。 ここでは、主要因としてi)PC鋼材緊張率(λ=Ap fpy/(Ap、 fpy+As fsy)、Ap fpy:PC鋼材の断面積と降伏点、As、fsy:普通異形鉄筋の断面積と降伏点)、:λ=0、0.4、0.7、1.0、ii)コンクリート設計基準強度:fc′=400、800kg/km^2、iii)横拘束筋体積比:ρs=0、0.7、1.4、2.8%、iv)横拘束筋降伏点:fsyh=3200、14400kg/cm^2の4種類を選定した。なお、異なるλ値の間では最大曲げ耐力の計算値はほぼ等しくなるようにPC鋼材と異形鉄筋の断面積を定めた。 本研究から、i)荷重・たわみ履歴ループの形状、靱性、エネルギー消散能等の部材特性や損傷程度はλ、fc′,ρs値に著しく影響されること、ii)横拘束筋による靱性改善効果はλ値によりかなり異なること、iii)fsyh=3200kg/cm^2の横拘束筋は最終的に全て降伏したが、fsyh=14400kg/cm^2では最大引張応力度はρs/fc′の増加とともに増大すること、iv)パーシャルPC(本例では最小λ〓0.4〜プレストレス50kg/cm^2)は正負交番繰返し下でのコンクリートせん断抵抗の著しい低下を防止する上で非常に有効であること、v)損傷部材の補修・補強においては耐荷力のみならず、部材靱性等の塑性変形特性の面からの検討もきわめて重要であること等が示された。
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