研究概要 |
近年数多く報告されているコンクリート構造物の塩害損傷事例は, コンクリート構造物が場合によっては必ずしも十分な耐久性を有していないことを明らかにした. 塩害による損傷を受けたコンクリート構造物を補修するにあたって用いられる最も一般的な方法は, 種々の合成高分子材料を用いたライニング工法である. 62年度においては, 塩害損傷に対するライニング工法に要求される性能として最も基本的な, 水分および酸素の拡散性状に関する検討を行った. 水分の内で, 液体としての水の透過性については, JIS A 6910「複〓模様吹付材」に準じて透水試験を行った. 気体としての水蒸気の透過性については, ウェット・スクリーニングしたモルタルを用い, JIS Z 0208「防湿材料の透湿度試験方法」を参考として試験を行った. さらに酸素については, コンクリート中に埋設した鋼板の限界電流密度を求めた. 得られた主要な結論を以下に示す. 1.鋼材腐食時の鋼材表面における酸素の消費とそれに伴う酸素の拡散をモデル化した実験におけるコンクリート中の酸素の見掛けの拡散係数は, 10^<-5>〜10^<-6>cm^2/sの範囲にあった. 2.本研究では, エポキン, ウレタシ, シラン, およびMMAをライニング仕様として用いたが, 前3者については低い物質透過性を持ち, その効果はある程度以上の膜厚(エポキシ, ウレタンについては240μm以上)で顕著となる. これに対し, シランおよびシランとポリマー・セメント・モルタルを併用した仕様は, 物質透過抑制効果はエポキシなどに比べて小さいものの, コンクリート中からの水分逸散を期待できる. 3.塩化物イオンがすでにコンクリート中に蓄積されている場合, 現在の補修仕様では対応が困難である.
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