現在、コンクリート構造物の補修などによく用いられている合成樹脂材料によるコンクリートの表面処理をとりあげ、材料を含む仕様、膜厚などの処理量、環境湿度の違いなどによる酸素、水の透過性の相違を明らかにするとともに、ひびわれ追従性をも考慮したうえで、鋼材腐食に関する耐久性設計を例として、コンクリート構造物の耐久性設計、補修設計の基本的フローについて検討を行った。 得られた主要な結果を以下に示す。 1.鋼材腐食時の鋼材表面における酸素の消費とそれに伴う酸素の拡散をモデル化した実験によれば、コンクリート中での酸素の見掛けの拡散係数は10^<-5>〜10^<-6>cm^2/sの範囲にあった。 2.ひびわれ追従性の小さなエポキシ、MMAおよびひびわれ追従性の大きなウレタンは低い物質透過性をもち、その効果はある程度以上の膜厚(エポキシ、ウレタンについては240μm)で顕著となる。 3.シランおよびひびわれ追従性を考慮したシランとポリマーセメントモルタルを併用した仕様は、物質透過抑制効果はエポキシなどに比べて小さいものの、コンクリート中からの水分逸散を期待できる。なお、ウレタンについてもシランと同様の効果を期待できる可能性が高い。 4.塩化物イオンがかぶりコンクリート中にすでに多量に蓄積されている場合、かぶりコンクリートをはつり取らずにコンクリート表面処理を補修用として施工しても、現在一般に用いられている仕様ではその補修効果は小さく、仕様の改善等、補修方法の検討を要する。
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