本研究は、放射性廃棄物のあるいは核反応生成物(核種)に対する遮蔽隔離材として繊維補強コンクリートを使用すると考えた場合の検討項目について考察を行ったものである。その研究成果をまとめれば、以下のようである。 1.放射性廃棄物の格納法と工学的バリアシステムについて調査し、廃棄物の地下貯蔵法に関する従来の研究を概観した。そして、監視手法としてのアコースティック・エミッション(AE)法の適用性も検討した。 2.コンクリート壁にひびわれが発生する場合の監視法としてのAE法の適用性について検討し、遮蔽用コンクリートでのひびわれ機構解明の可能性を明らかにした。 3.有限要素法(FEM)と境界要素法(BEM)による解析コードの整備と開発を行った。そして、核種輸送のシミュレーション解析により次の点が明らかになった。 (1)バリア材の拡散係数、吸着係数、吸収係数は遮蔽壁の表面付近での汚染領域の広がりより、そこでの蓄積に主に関係する。 (2)汚染領域の広がりに大きく関係するのは、気体の移動速度であり透気性能である。これは透水性とも関連することより密実なコンクリートの開発が期待される。 4.物性値として重要な透水係数を非定常散実験により求める方法を開発した。ここで透水係数の決定に際して、初年度は一次元理論解に基づいた方法を考案したが、最終年度では実際の供試体のFEM解析結果より補正する方法を開発した。これによって繊維補強コンクリートの透水係数を実際に評価したが、モルタル、普通コンクリートとオーダ的に差異はなく、繊維の混入は透水性能に影響のないことが確認された。
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