研究概要 |
本研究の成果を要約すると, 以下のようである. 1.超音波スペクトル計測システムは, 振動スペクトルとは異なり, 必ずしも線形ではなく, スペクトル解析から得られるコンクリート供試体の応答関数は振動子, 供試体の形状寸法などにより僅かに異なった結果となる. また振動子とコンクリートとの音響学的結合方法によってはスペクトルが異なったものとなる. しかしながら, 一定感度の振動子を使用すれば, コンクリートの品質を的確に評価することができる. 2.応答関数のスペクトル密度では, コンクリートの定量的な品質評価は困難であるが, スペクトル密度を積分したエネルギーを用いれば, 品質を定量的に評価できる. 3.コンクリートの締固めが悪く, 単位重量, 音速が小さい供試体ほど, また粗骨材最大寸法が大きくなるほど, 応答関数のエネルギーが小さくなる. コンクリートの音速は品質が悪くても必ずしも低下するとは限らないが, 超音波スペクトルはコンクリートの品質により大きく変化するため, より的確な品質評価が可能となる. 特に空洞, ジャンカなどの内部欠陥探査は, 音速よりも, 的確にできると思われる. 4.アルカリ骨材反応による損傷とともに, コンクリートの音速および応答関数のエネルギーは低下するが, エネルギーの変化は音速の変化よりも敏感であり, アルカリ骨材反応によるコンクリートの耐久性評価には, 音速よりも超音波スペクトル解析の方が適していると思われる. 5.供試体内での超音波パルスの往復伝播のスペクトルに及ぼす影響を取除くために, 受振波頭の半波長を対象にしたスペクトル解析方法は, コンクリートの品質評価方法になるものと思われる.
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