研究概要 |
昭和61年8月に発生した河川堤防の欠壊は甚大な被害を残したが, この災害は河川の管理特に河川堤防の安定性の管理の重要性を改めて我々に問いかけるものであった. 研究代表者は, 昭和60年にこの河川堤防の安定性について堤体洪水流から作用する底面せん断力による洗掘現象の進行が堤体の安定に大きな影響をあることを指摘して, 我が国で初めてのドラム型遠心力裁荷装置の作成を提案し, 堤体の相対的速度を有する洪水流を実験的に発生させることに成功した. その中で堤体と河川工作物の接点部での洗掘抵抗力が弱いことも見い出した. しかし, その時はドラム本体の試作のみが可能であったので, 堤体内部の変形, 間隙水圧の観測が不可能であった. そこで本研究では, 既設の装置にスリップリニングを設置して提体の破壊の進行を表面変位量及び堤体内部の間隙水圧変化から把えることを目的とした. その結果, 次の点が明らかとなった. 1.小型間隙水圧計によるドラム内部の静水圧測点では, 実測値は理論上期待される値の約70%に止どまった. 2.堤体下部の粘土層内の間げき水圧挙動は, 一次元圧密理論と異なるものとなり, ドラム型特有の幾何学的形状を取り入れた理論的検討が必要であることが明らかとなった. 3.2の結論に基づき, 軸対称平面歪条中下におけるビオ・圧密方程式を導き, 現在その数値解の図表化を行っている.
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