研究概要 |
1.研究目的:本研究では, 従来の様な斜面をもつ小流出試験地ではなく, 平地での試験地による観測実験の結果から, 植生の違いが平地における雨水の鉛直水分移動すなわち浸透過程に及ぼす影響と効果について実験的に検討したものである. 2.研究概要:試験地は, 大学構内に植生の効果を調べるための草地, 降雨の遮断効果及び蒸発散作用を含む木の根元, そして植生の影響を受けない裸地に測定地点を設け, 各々の深さ50cmに自記テンシオメータを埋設して, 各地点の圧力(毛管)ボテンシャルを測定した. このサクション値(PF)から土壌水分率(Mv)に換算し, 雨水の鉛直水分移動を調べた. また, 上記と併行して,転倒ます型自記式雨量計を設置して連続的に計測される降雨データに対し, 単位時間(1hr)ごとに降雨量を測定した. 3.主たる結論:実験により得られた各洪水にみられるPF値及びMvとの関係について考察を加え, 以下のような結論を得た. (1)土壌水分率の変化は,裸地においては降雨初期に, 草地では降雨継続時期中に, そして木の根元では降雨終了後であることが明らかになった. (2)降雨との応答時間が植性の違いによって異なる. すなわち, 裸地, 草地そして木の根元の順に応答時間が早いことがわかった. (3)最大土壌水分率とこれに達するまでの積算雨量との関係の結果から, 裸地が一定の浸透能に近づいているのに比べると木の根元に関しては, 一定の浸透能には達していなく上昇傾向にある. 雷雨性の降雨パターンの中でも特に降雨強度の強い例では, 木の根, 裸地に比べて草地の土壌水分量が少ない. すなわち, 降雨強度が強い場合に土壌への浸透の状況が草地では異なっていた.
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