研究概要 |
前年度では、波崎海洋観測研究施設での現地観測ならびにリモートセンシング画像(LAN-DSAT,SPOT)データの解析結果により、浮遊砂による「密度効果」が海浜流系に密接に関与してる可能性が示された。このことは、ラデイエーション応力のみを主たる外力として取り扱っている既存の海浜流系の理論の不備を示すものであり、さらには本研究で直接対象としている海浜流の三次元性にも関わっているものと判断された。そこで本研究では、単に既存のラディエーション応力に基づいた二次元的海浜理論を三次元に拡張するというのではなく、実際に海浜流系に関与しているファクターを現地実測等に基づいて把握することを試みた。具体的には、リモートセンシングデータ(衛星画像並びに航空写真)を全国のいくつかの主要な海岸について解析した結果、石狩湾のデータ中に既存の海浜流理論の枠組みではとらえにくい特徴的な流れのパターンが存在することが見いだされた。その原因を探るため、昨年9月に石狩湾で現地観測を実施した結果、海浜流系の計算で通常考慮されることのない風と沖の海流の作用によるものであることが明らかになった。 一方、これらに並行して以下の理論研究を行った。具体的には、上述の「密度効果」の導入を目的とした浮遊砂の移流拡散過程を算定するための準三次元浮遊砂モデルを新たに開発した。開発にあたっては、(1)砕波帯内外の浮遊砂現象の本質である輸送過程の非平衡性を十分に反映させるために浮遊砂の鉛直濃度分布を精度良く算定できるモデルとすると同時に、(2)既存の平面二次元モデルに比べて余り複雑にならない簡便なモデルとすることを目指し、重み付残差法の考え方を用いた解析手法の開発を行った。この方法は、三次元性をシンプルな形でかつ精度良く取り込むことのできる一般的な方法となっており、現在この方法を用いて、風と浮遊砂の効果を含んだ(準)三次元海流モデルを開発中である。
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