研究概要 |
単一方向の不規則波浪の解析法にはテペクトル法と波別解析法とがあるが, 多方向不規則波浪に対してはもっぱら方向スペクトル法が用いられてきた. 本研究においては, 多方向不規則波浪に対する波別解析法に着目し, 個々の波の波高と波向の確率分布を理論的に導き, その結果を現地観測結果と比較して検証することを目的としている. ガウス過程の仮定に基いて, 多方向不規則波浪を波物解析した場合の個々の波について, まず平均波向的な考え方から個々の波の波向を定義した. そして, 波高と波向の結合分布の理論式を導いた. 結果として得られた結合分布の式は, 水面変動および水平2成分水粒子速度の分散および共分散から決定されるものとなっている. 理論の検証を行う目的で, 現地観測を行った. 期待される波浪条件等を勘案して, 茨城県大洗港周辺を選定し, 昭和62年11月に観測を行った. あらかじめ設定された観測地点に, 超音波式波高計および電磁流速計の組合わせを, 船上より投入し, 波と流れの同時観測を行った. 観測前日までは風波で, 波高が高かったが, 当日は風もおさまり無事に観測データを得ることができた. 得られたデータは, 電子計算機を用いて処理を行い, 理論値との比較・検討を行った. 波高と波向の結合分布という2次元の確率密度分布を検証するに足る長時間の観測結果と比較したところ, 理論値との一致は非常に良好であった. 従って, 本研究における理論的アプローチの妥当性が裏付けられたといえる. 今後は主波向的な波向の定義についても検討を行うとともに, これらの理論の応用についても研究を進めていく予定である. これにより, 波向に関する波浪の不規則性を, 工学上の諸問題に合理的にとり入れる方法を提案することができる.
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