本研究では、流域の流出物理特性推定に水質情報を利用できるか、さまざまな対象について検討した。 1.流域全体の流出物理特性と水質情報との関係を検討した。検討結果をまとめると、以下の通りである。 (1)水質を利用した流出成分分離法により、流出特性の原因となる物理機構が推定できた。検討した対象流域では斜面流出特性の影響が大きいと分かった。 (2)濃度低下率という水質情報と流出寄与域特性とを関係ずけることができた。 (3)簡単な流出システムのパラメータ推定に水質情報が利用できることを示した。また、そのためにはシステム構造の想定が前提となることを示した。 2.流域流出機構を構成する素過程のうち、水みち流れに関するもについてその特性を水質情報により解析した。検討結果をまとめると、以下の通りである。 (4)構造的水みち流れについて、マトリックス部粒径、トレーサー種、トレーサー濃度等、がトレーサー移動に与える影響を明らかにした。 (5)非構造的水みち流れについて、トレーサー移動が水の存在するところで均一に起こっているのではないことを明らかにした。 (6)二層斜面からの流出について、トレーサー移動経路を説明するためには二層の境界を横切る流れを扱うための特別なモデルが必要なことを示した。
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