本年度においては、まず基礎的な理論の改良を行った。利用者交通均衡と交通信号機制御との相互干渉をモデルに組み入れる際、現実面および数値計算の可能性の面から2レベル計画問題としての取り扱いではなく、同時均衡問題としての取り扱いを行うよう改良した。このモデルは道路利用者と交通管理者の双方が非協力的に自らの最適戦略を追究する際に到達する平衡状態を求めるものである。またこのモデルに対する数値解法を提示した。次に本均衡交通分法を実際に大規模道路網に適用し、本手法の適用性についての検討を行った。対象としたのは岡山県南広域都市圏の道路網であり、同地域のパーソニトリップ調査結果より昭和60年自動車OD表を作成し、また道路網の現地調査より妥当なパフォーマンス特性を設定した。これらをもとに均衡交通配分計算を行った。計算の結果、Frank-Wolfeアルゴリズムでは反復が進むと計算の効率が悪くなるため、均衡解に接近するためにはかなりの反復が必要であることがわかった。得られた推計交通量を道路交通センサスによる実測交通量と比較したところ、両者の相関度は高く、本手法は実用的には十分の予測精度を有することが明らかになった。ただし推計値の方が若干大きいが、これは対象道路網に含まない道路リンクの影響によるものと思われる。一方旅行時間に関しては、推計値と実測値との相関度は低かったが、この原因は本手法では1日の平均的な交通状態を測定しているのに対し、道路交通センサスではピーク時旅行速度が測定されているためであると思われる。カラーグラフィックスを用いて交通量、旅行速度、混雑度、交差点遅れなどを2次元的に図形表示することにより、対象道路網での交通状態を把握するのに非常に効果的であることが確認できた。今後旅行速度、交差点待ち時間等に関する実測データを収集し、本手法の適用性をさらに検討していくことが必要である。
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