本研究は、渋滞流を有する混雑した道路網における交通流動を解析するための方法論を確立することを目的として様々な観点からのアプローチを試みた結果、以下に示す成果が得られた。 1.渋滞流を有する道路リンクにおける旅行時間を、非渋滞流による走行時間とリンク端末での遅れとに分解して取り扱うとき、後者は従来の需要固定交通均衡問題にリンク端末での容量制限式を明示的に付加した数理計画問題における容量制限式のラグランジェ乗数値に等しいことを明らかにした。 2.上記の問題に対する数値解法として、ラグランジェ乗数法による厳密解法および内点ペナルティー関数法による近似解法の2つの方法を提案した。 3.道路利用者の経路選択と交通制御との相互干渉を考慮した2つの交通均衡モデルを構築した。その一つは交差点での交通処理可能性条件を従来の交通均衡モデルに付加するものであり、このときの解はM.J.Smithによって提案されている応答的制御策Poに即した均衡解となることを明らかにした。他の一つは利用者均衡と交通管理者の制御目標達成との同時均衡解を求めるものであり、これはゲーム理論におけるNash均衡解に相当する。またこれら2つのモデルに対する数値解法を提示した。 4.以上の均衡交通配分法に関するパーソナルコンピュータを用いた電算機支援システムを構築した。均衡交通配分計算を能率的に行うプログラムを作成するとともに、交通流の流動状況を把握するためのカラーグラフィックスを用いた図形表示法およびそのための道路網の図形入力方法を開発した。 5.以上の均衡交通配分法を岡山県南広域都市圏道路網に適用した結果、交通量に関しては推計結果は実績値によく適合することが明らかになった。ただし旅行時間の再現性に関しては十分なデータを得ることができず、今後実証的な検討を行っていく必要がある。
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