本研究では、所定の成層順序と膨張厚さをもつ多層濾過池を実現するために必要な逆洗速度と濾材の組合せを求める手順を提案することを目的とし、理論と実験の両面から検討した。多層濾過池の抑留効果に関与する濾層構成と逆洗効果に影響する膨張厚のいずれもが基本的には流動成層化状態によって決定されるという観点から、種々の空塔速度に対応した多成分固液流動層の各粒子濃度と成層パターンを明らかにすることを中心に研究を進めた。 (1)多成分固液流動層の解析において基礎となる単独層の濃度式流動化実験に基づいて作成する一般的手順を示すとともに、単粒子自由沈降におけるレイノルズ数が1.2〜35の範囲について具体的な実験式を得た。 (2)濃度項を補正した抗力と液中重量のつり合いから混合層濃度式を導き、ガラス球と活性炭球による2成分流動化実験でその妥当性を確認した。 (3)粒径分布を考慮した濃度計算法を単独層並びに混合層の場合について提案し、各粒子の単独膨張特性が均一径で表現できるような場合でも、混合開始付近の空塔速度範囲では粒径分布を考慮する必要のあること示した。 (4)相隣る上下2層の粒径分布に基づいた混合開始空塔速度の推算式を提案し、3種類の粒子の組合せ実験から本式の妥当性を確認した。 (5)空塔速度の違いによって生ずる層の種類と成層の順序および各層厚を求める計算方を「流動層内全粒子についての位置エネルギの総和が最小になる状態が実現する」という仮説に基づいて導き、実験によって検証した。 (6)多層濾過池の逆洗操作における濾材の完全分離成層条件として、 〈1〉流動開始条件、 〈2〉非流出条件、 〈3〉成層条件、 〈4〉非混合条件の四つをあげてそれぞれの具体的計算手順を示し、現在多用されている濾材である砂、アンスラサイト、ガーネットに適用して膨張率を20〜40%の範囲に維持するこめに必要な粒径の上・下限値を得た。
|