研究概要 |
本研究は, カオリン懸濁液に主凝集剤としてのPACと微量のノニオン系人工有機性高分子凝集剤とを併用注入した原水を直接ろ過し, その際のろ過の特性やメカニズムを明らかにすることにより, 人工高分子凝集剤の直接ろ過に及ぼす効果を検討することが目的である. 今年度は, 前半では, カオリン50mg/lを含む原水の凝集特性の把握に重点を置き, 各種の条件下でジャーテストを行った. その結果, 原子濁度が低いためか, カチオン系, ノニオン系, アニオン系のいずれの凝集剤でも, また, いずれの2種の組合わせ注入においても, 十分な凝集効果は得られなかった. さらに, PACとの併用では, 最適凝集領域における上澄水濁度は殆んど改善されず, また, ゼータ電位にも殆んど影響は認められなかった. しかしながら, ノニオン系とアニオン系凝集剤注入時には, ビーカー底に高密度で大径のフロックが形成された. 沈降管を用いてそれらフロックの水中有効密度を測定したところ, 丹保・渡辺によって報告されたアルミニウムフロックの5〜10倍の密度であった. 後半では, PACを主凝集剤, ノニオン系高分子凝集剤の併用によって, ろ層の損失水頭は顕著に増加するがろ過濁度はろ速を上昇させても極めて清澄であった. このことは, 濁質抑留分布の測定からも明らかになったように, ノニオン系高分子凝集剤使用の場合, フロックは上層抑留の傾向となることを示しており, 濁質のろ層内分配による損失水頭の緩和が今後の課題として残された.
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