本研究は、本学水道水にカオリンを添加した懸濁液を原水として、前半では主凝集剤であるPACと併用した人工高分子凝集剤(以下、PAMと称す)の効果と特性について、後半では珪砂単層およびアンスラサイトと珪砂とからなる二層を使用した直接ろ過を行い、PAMがろ過に及ぼす効果と将来における有用性について検討したものである。 始めに、ジャテスターを用いた凝集実験では、PACを主凝集剤とし、カチオン、アニオン、ノニオン系凝集剤のいずれを助剤として注入した場合にも、上澄水濁度、最適凝集pH領域、粒子のゼータ電位には何ら有意な変化は認められなかった。こは原水濁度とPAM濃度が低かったため、PAMの効果が表面化しなかったものと考えられる。しかし、ノニオン系とアニオン系PAM注入時には、ビーカー底に大きな高密度フロックが形成(Alフロックの5〜10倍の密度)され、ろ過段階では何らかの形でPAMの効果が出現することを予測させた。こうした結果に対し、直接ろ過では損失水頭、ろ過水濁度、濁質の抑留分布のいずれでもPAM注入率の高いほど、ろ速の速いほど多かったが、特に、表層部のろ材径が大きい二層ろ層では、濁質の深層抑留の傾向となり、損失水頭の発生が大幅に抑制された。また、ろ過水濁度は、PAM注入率の微増に伴って大幅に低下し、清澄期の最低濁度はいずれも検出限界以下、清澄期間はPAM注入時の方が長く、全体として二層ろ過が単層ろ過より良好な結果を示した。 以上、PAM注入を伴う二層ろ過は損失水頭、ろ過水濁度、ろ速の高速化の観点から見て、将来的に有望なろ過法であることが明らかになった。
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