圧力式下水道とは、重力に従って下水を流していた従来の方式とは異なり下水をポンプで圧送するもので、平坦地への適用が検討されている。ここで検討するのは圧送時に空気を注入する方式で、下水を好気条件に保ち、また固型物の堆積を防ごうとするものである。昨年度は空気を注入した場合の酸素移動について検討を加え、気-液混相流の流動方式が酸素移動に大きく影響することを示した。本年度は、空気の注入が管内流速や乱れ強度に与える影響を中心に検討を行い、汚泥の堆積と掃流についても検討を加えた。得られた結果は以下の通りである。 実験室内の管路(径65mm、総延長27m)を用い、水は循環させ、空気は管路の途中部分から注入した。注入点より十分下流の地点において熱膜流速計によって流速測定を行った。流速計の出力をディジタル化した後、計算機を用いてデータ処理を実施した。液相の見かけ流速、気相流量をそれぞれ独立に3段階に変化させた。また流速測定位置も管断面に対して2ケ所とった。空気注入は特に液相流速の変動、乱れ強度を大きくする効果を顕著に示した。空気注入量が多いほどこの効果は大きかった。スペクトル解析の結果、気泡の通過が管内の乱れの生成に大きく寄与していることがわかった。管内にブロックを堆積させた実験においては、空気を注入しない場合には流速が0.52m/secに達して初めて堆積物が巻き上がったのに対し、空気を注入した場合には空気注入自体で十分な乱れが起き堆積物が巻き上がった。このことから、空気注入を行なった場合には乱れが大きくなり堆積物の蓄積が防止できることが示唆された。酸素移動速度係数k_Lと乱れ強度の関係を調べたところ、無指向性の流速測定センサーで得た結果とよい相関があることがわかった。おそらく、流下方向の乱れ成分に比べ上下方向の乱れ成分の方が大きく酸素移動に寄与しているためであろう。
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