研究概要 |
本年度は以下の3研究課題について検討した. 1.粒子状物質の元素分析にPIXE法を利用するにあたって必要な, 基本的条件の検討・・・まず, PIXE分析法での検量に必要な標準試料を作成し, 次にPIXE分析のための最適な測定条件を実験的および理論的に調べた. 標準試料の作成には, 真空蒸着法と赤外加熱・冷却凝縮法を利用したが, 後者は実験技術上, Pb, Znなどの低融点物質以外には利用できなかった. また, 標準試料のバッキング材としての適否については, ニュークリポア, ミリポアフィルター, カーボン板などについてテストした. その結果, 熱に対する安定性やビーム照射に伴う電荷の蓄積等の問題から, 高純度カーボン板が最適であることが判った. 最終的には特性X線のエネルギー分布を加味し, AI, Cr, Co, Cu, Zn, Se, Te, Ce, Pbの9元素を選び, 高純度カーボン板をバッキング材として, 各種厚みの標準試料を作成した. PIXE分析法での加速器の荷電粒子条件としては, ビームを大気中に引き出した場合, 真空中の場合について各々, イオン源=H^+(真空中He^<2+>), ビームエネルギー=1.5〜2MeV, ビーム電流=〜3nA(真空中50〜300nA), ビーム照射電気量=1〜5μC(真空中100〜300μC)程度の値を得た. 2.エアロゾル粒子のサンプリングと分析・・・種々の環境条件下で大気エアロゾル粒子の, また自動車排気粒子など発生源粒子のサンプリングを行ない, 一部の試料についてはPIXE分析を実施した. 現在約150試料を保有. 3.リセプターモデルの信頼性の検討・・・粒子状汚染物質の各発生源における指標元素濃度の変動に対する, 発生源寄与率推定値の信頼性について検討した. 代表的発生源種の内, 土壌, 石油燃焼発生源は精度よい汚染寄与率推定が可能であるが, 自動車, 海塩は指標元素の特異性が小さいため推定精度は低いことが明らかとなった.
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