研究概要 |
本年度は以下の4研究課題について検討した。 1.粒子状物質の多元素同時分析法であるPIXE法に関し、より適切なサンプリング条件や測定条件について検討し、それらの条件を設定した。本課題では、昨年度検討し作製した9標準試料元素を用いた。標準試料元素ごとに検量線を求め、それより分析対象元素に対する感度曲線を作製し、検出下限濃度を推定した。作製した標準試料は、PIXE分析用の標準試料として有用であることを確認した。 2.種々の環境条件下で粒子を捕集・分析し、大気中の粒子状物質の化学性状を調べた。大気中の粒子状物質約260サンプルを採取した。大気粒子試料については、黄砂などの典型的気象パターン時を中心に、年間を通してサンプリングを行なった。現在、PIXE法により順次粒子中の元素分析を行っている。主要な知見は、(1)黄砂時には粗大粒子濃度が著しく高くなり、元素別にはSi,Al,Tiに特徴的に現れた;(2)夏期光化学スモッグ時には、微小粒子中のS成分が高濃度になる傾向が認められた。大気エアロゾル粒子のサンプリングでは、2μm付近で分級捕集することが望ましい。 3.既存のリセプターモデルの信頼性、解析限界について検討した。初期の目的を達成し、研究成果は「大気汚染学会誌」に発表した。指標元素濃度の発生源寄与解析に及ぼす影響について定性的傾向をつかみ、ランダム誤差・変動に対する解析結果の信頼限界について、定量的範囲を提示した。 4.上記研究課題2で述べた大気エアロゾル粒子の元素分析結果や、国設大気測定局で測定された元素濃度データに対しリセプターモデルを適用し、発生源種別の寄与率推定を行い、発生源寄与の季節的変動特性や地域的特性について検討を進めている。
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