研究概要 |
本研究では、発生源種別の汚染寄与特性を解明すること、及び発生源寄与の推定精度を高めることを目的とし、以下の項目について検討した。 1)微量元素分析(PIXE分析)法の確立:4種の照射システムについて照射・測定条件と感度・精度との関係について検討し、加速器での照射・測定条件を決定し、PIXE測定体制をほぼ確立した。また、本研究で作製した検量用標準試料(9元素58試料)は、PIXE分析をはじめ微量元素分析用標準試料としてきわめて有用であることを確認した。 2)各種環境中の粒子状物質の元素組成分析:1987年以来大気エアロゾル粒子を中心に、一部自動車排気粒子など発生源粒子を含め、粒子サンプリングと元素分析を行なってきた。大気エアロゾル粒子は、粗大・微小粒子別に発生源に関連した元素濃度特性を持ち、また濃度の季節的変動には気象・大気条件に応じた特有なパタ-ンが存在することを示した。 3)リセプタ-モデルの信頼性の検討:各発生源の指標元素濃度の系統的変動、および環境測定デ-タや発生源測定デ-タに内在するランダム誤差や変動に対するリセプタ-モデルの信頼性、解析限界について検討し、粒子濃度測定における許容測定誤差、また発生源プロファイルデ-タ変動に対する許容最大変動係数を、推定誤差の許容範囲別に示した。 4)リセプタ-モデルによる発生源寄与解析:上記研究課題2における大気粒子の元素分析結果や、国設大気測定局で測定された元素濃度デ-タに対し、リセプタ-モデルにより発生源種別の汚染寄与率を推定し、発生源寄与の季節的変動特性や地域的特性を明らかにした。 今後は、発生源解析法の精度向上をはかるために、モデルの改良、基本デ-タの整備を行なうとともに、微量分析法としてのPIXE法の向上、C,N,O,H等の軽元素分析法の確立、さらに酸性雨等大気汚染現象解明への微量分析技術の応用、等について研究を進める計画である。
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