研究概要 |
1.低濃度ウェルシュ菌の定量方法としてガラス繊維濾紙を用いた濾過法について予備的検討を行った. その結果メンブランフィルター法による値との間に有意差は認められなかった. ガラス繊維濾紙法はメンブランフィルター法に比べてより多量の水を濾過することができ, 環境水中の低濃度レベルのウェルシュ菌を定量的に評価するのに優れた方法であることが示唆された. 2.下水中に存在するウェルシュ菌はその相当部分が捕食, 沈降といった外的因子によらなければ死滅しない傾向が強いことが再確認された. しかし栄養培地で増菌した細胞では大部分が比較的速やかに死滅した. これらの結果から環境水中に生残しているウェルシュ菌は芽胞として存在している可能性があることが示唆された. 3.ウェルシュ菌の遊離塩素に対する抵抗性を実験的に評価した. その結果栄養型細胞の場合塩素濃度1mg/lのときの不汚化速度定数はpH6で約2, pH7で約0.5, pH8で約0.2程度(単位はいずれも1/min)のレベルであった. したがって水道水の基準である0.1mg/lの塩素濃度では接触時間約1時間でようやく1/10に低下することになり, 強い塩素抵抗性があることが示された. また塩素抵抗性はpHに強く依存しているが, その理由は主にpHの変化によって生じる遊離塩素の化学形態の変化(次亜塩素酸濃度)によるものと判断された. 4.雑用水道水処理システムの2つの代表的処理プロセスについてウェルシュ菌の除去性と他の指標細菌の除去性を比較した. その結果ウェルシュ菌は消毒以外のプロセスでは大腸菌群や糞便性連鎖球菌と類似した挙動を示した. 一方消毒プロセスではウェルシュ菌のみが強い抵抗性を示した. この結果実際の水処理システムにおいてウェルシュ菌は細菌の物理的除去の指標として優れた指標性があることが示唆された.
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