昭和62年度に正負繰り返し載荷実験を行った、鉄筋コンクリート内部柱・はり接合部を通し配筋されているはり主筋の付着性状および最大強度時の接合部平均せん断応力度をパラメータとした平面十字型接合部の実験結果を昭和63年度にまとめて整理した。昭和63年度には、既往の実験で報告されている接合部破壊型での高いせん断強度と、靭性設計で重要となるはり曲げ降伏後のせん断圧縮破壊型での比較的低いせん断強度の関係に注目して、実験での接合部の劣化破壊過程を詳細に検討した。さらに架構の層間部材角および接合部のせん断変形の推移を考察し、それに与えるはり主筋の付着性状の影響についても検討した。 本研究の実験の範囲内で得られた知見を以下に示す。 1)接合部を含む骨組の最大強力と部材角の関係は、せん断入力量が増大するに伴い変形は小さく、その値は〓_<PU>=0.3Fcで層間部材角1/25rad、〓_<PU>=0.4Fcで層間部材角1/50rad程度である。 2)接合部の圧壊は最大強度以前に現れ、圧壊時と最大強度時の変形量の差は、せん断入力量が増大するに伴い、大きくなる。 3)接合部のコンクリートストラットが圧縮強度時の歪に達する変形については、〓_<PU>=0.4Fc付近でははり主筋の付着性状による差はみられず層間部材角1/50rad程度となるが、〓_<PU>=0.35Fc付近では付着の悪い試験体で層間部材角1/45rad、付着の良い試験体で、層間部材角1/36radであった。せん断入力が低く、はり主筋の付着が良好な場合には、接合部内の応力が分散され変形能力が増すことが認められた。 今後一般化するためには、接合部せん断補強筋比の違いによる本実験で得られた限界変形曲線の変化を観察する実験が必要である。
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