住宅地の環境形成の中で、植栽は心理的効果や気候調節機能なで、その果たす役割が大きいことはよく知られている。しかし、実際の設計計画においても、これらの効果を十分考慮した事例は少ないようである。 本研究では、住宅地や住宅の設計計画において植裁手法を導入する場合、熱環境形成に及ぼすそれらの効果を建築環境全体の中でとらえることのできる資料を提示することを目的とする。 1.並木の中や芝生の上などの植栽空間を含む建築外部空間(29地点)を対象に選び、夏季の晴天日においてそこに形成される熱環境の実態を屋外熱環境計などを用いた実測調査により把握した。一方、測定対象地点の周辺の状況を樹木、芝生、建物、天空等の形態係数によりとらえ、定量化した。 2.実測結果をもとに、各地点をケース、日中と夕方の3中空球の球心温度、気温、風速を説明変数として主成分分析を行い、「陽あたり効果」、「再放射を感ずる度合」、及び「風速」と解釈できる軸を得た。「陽あたり効果」、「再放射を感ずる度合」の2軸上にて、各地区の放射熱環境の特徴と空間形態との関係を考察し、建築外部空間に形成される熱環境の中で、植栽空間の位置づけを明らかにした。すなわち、1)植栽の多い空間は地下道のように日射を受けず熱容量の大きい材料で構成された場所をのぞくと、日向、日影に関わらず冷放射を感ずる度合が高い空間であることが明らかとなり、夏の涼しい熱環境の形成に有効である。2)樹木に覆われた空間の熱環境は、天候の変動の影響もあまりうけず、昼間と夕方の差も小さい。 3.並木の下、芝生の庭、アスファルト地面の駐車場について、屋外熱環境計の測定値から主な熱環境要素である気温、全日射量、平均放射温度、風速を求め、2.で得られた知見をこれらの熱環境要素によって説明し、植栽空間の特徴を明らかにした。
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