前年度に引きつづき、大都市圏および地方中心都市に立地する区分所有集合住宅(マンション)において、所有と利用の不一致、すなわち、所有者の不在化の進行、背後にある所有権の流動化、マンションの立地・供給動向等との関係について総括的な分析を行った。さらに本年度は、不在者の離散プロセスと離散圏域のパターンとその意味について分析した。 不在者の離散は各々の都市がどのような都市圏内及び全国的な関係をとり結んでいるかを表している。大宮、千葉は東京により強く支配される傾向をもち、一方、同じタイプの堺は狭域で市内居住者の所有を安定して保持している。一方、地方都市型では福岡が最も進展し、東京及び九州全域に離散化が及ぶ。札幌は東京と市内へ二極分化傾向を示し、名古屋は東京と大阪への二極分化をなし、広島は堺市と同様、不在者の広域離散は抑制されている。 離散の傾向はマンションの建設年代、開発規模、住戸規模、供給主体、立地等により各々の都市の特性を浮かび上がらせる。このことは離散圏が逆に都市間の関係を含意ある「隠れた圏域」であることを示す。 次に本年はマンションの不在賃貸住戸が社会的な借家需給関係の中で占める役割と問題について解明した。調査データは仙台市(都市圏)における新築借家供給(工事届15ケ月分)の実態と市場レベル(住宅規模)での民間借家の立地、規模、平面型、家賃、地価(相続税路線価)としその相互の連関を分析した。その結果、マンションの賃貸化住戸は、フローにおける小規模借家への集中を補い、定住可能型賃貸住宅の主要な部分を担っていることが分かった。しかし、これらは社会的、政策的に位置づける為には大きな弱点をもっており、その中心にあるのが不在者の離散にあることが解明された。
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