大都市圏及び地方中心都市に立地する区分所有集合住宅(マンション)において、所有と利用の不一致、すなわち、所有者の不在化の進行状況、背後にある所有権の流動化、マンションの立地・供給動向、不在者の離散プロセスとその意味等について分析した。調査対象は札幌、仙台、大宮、千葉、名古屋、堺、広島、福岡である。分析結果の概要を以下に述べる。 1.大都市圏のベットタウン都市は不在化が抑制され、逆に所有権の移動が激しい。これは中古住宅の流動性の高さ、定住の為の住宅需要が支配的であることを示す。 2.地方中心都市では不在化が4割水準に達し、賃貸住宅需要、業務需要マルテハビテーションの需要が大きい。従って、投資的要素が強く、それだけ所有権の移動が抑制されている。 3.不在化はオイルショック後に完成した物件で特に進行し、ストックとしての不安定な状態が益々深刻化してゆくと考えられる。 4.不在化は立地、建設年代、開発・販売主体等の要因でかなり左右される。但し、これらの作用は地域の市場関係の特殊な条件とも関連し、各々の都市で独自な傾向をもつくりだしている。 5.不在・賃貸化した住宅は市場において一定の社会的役割をはたしている。特に、着工レベルの小規模賃貸住宅への偏りが、市場レベルではマンションの賃貸化により、定住可能型と云える中・大規模の需要を吸収している。 6.持家政策の中でつくりだされたマンションが、社会的な借家需要に応えるという矛盾を内在させている為、分譲持家としての限界性と共に、借家としても社会的ストックとして位置づけための問題性、要件の欠落と有している。所有者不在とその空間的離散は、マンションの社会的、政策的な位置づけの方向転換を迫る結果を示した。
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