研究概要 |
2ケ年にわたる研究のうち, 本年度は, 小学校と中学校の都市教育について, 以下の作業と分析・検討を行なった. 1) 小学校の社会科教科書について, 昭和22年〜62年分の小学1〜6年の教科書約950点を点検し, そのうち都市・住宅関係の記述のあるもの約200点を収集した. また, 中学校についても同様に, 昭和23〜62年分の地理的分野, 政治経済社会分野, 公民的分野を含むもの約550点を点検し, 必要なもの約270点を収集した. 2) 分析に当たっては, 学習指導要領の改訂期と我が国の社会経済の時代変化を重ね合わせて, 当面以下の5期に区分し, 検討した. 第1期・文部省教科書期;小学校で「都会の人たち」, 中学校で「日本の都市」の分冊が発行され, 国土復興を目指した総合的な扱いがされた. 第2期・昭和22年・26年指導要領期;都市生活や住居の項が設けられ, 前期に続き内容の広がりを保ち, 都市計画や都市の未来像に触れたものもあった. 第3期・昭和30年・33年指導要領期;都市・住宅に関するまとまった項が少なくなり, 都市問題の萌芽期にも拘らず, 一般的にしか記述されなかった. 第4期・昭和43年指導要領期;公害問題を中心に都市の環境悪化が取り上げられ, 住民運動も登場した. しかし, 都市問題の要因も人口集中の弊害を中心に記述される位であった. 第5期・昭和52年指導要領期;都市に関する扱いは更に分散的になるが, その指摘は各地域毎に具体的になる. しかし, 問題の改善方向も現状の政策提示に止まる. 3) 戦後の小・中学校の都市教育は, 農村から都市への発展ないしは都市と農村の対立という図式から抜けきらず, 従って都市問題についても人口集中による弊害という視点での問題指摘で, あるべき都市や計画, 生活様式の姿が描ききれていないことが指摘できる.
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