2ケ年にわたる研究のうち、昨年の小学校と中学校の都市教育の分析に引き続き、今年度は、高等学校の都市教育について、以下の分析と検討を行なうとともに、最終年度のまとめを行なった。 1)高等学校の社会科教科書について、昭和22年から62年度分の教科書のうち、(人文)地理、政治・経済、現代社会の教科書456点を入手し、うち都市関係の記述のあるもの213点を集中的に分析した。 2)分析に当たっては、学習指導要領の改訂に合わせて、小・中学校と同様7期(ただし第1期の文部省著作教科書に該当するものは見当らない)に分け、検討した。第2期では、人文地理の都市の発達についての記述程度である。第3期では、都市の機能や外国の都市計画を中心にして、都市の生活も若干見られた。第4期は、人文地理の中で、都市の計画にやや多くの量をさいた。第5期は、人文地理と、政治・経済で、都市の問題や地域計画をも加えた都市の計画にも大きく触れた。そして、第6期には、都市問題や環境問題にもやや詳しく触れた。第7期は、地理、政治・経済、現代社会で扱われ、特に現代社会で都市の環境や問題について、その生活様式を含めた問題にも深く言及した。 3)戦後の高校社会科における都市教育の問題点を整理すると、都市教育は地理を中心に扱われた、主として都市の機能が中心であり、様々な都市の問題は、政治・経済や現代社会で分散的に扱われた。小・中と同じく、深く都市的生活様式の問題にまでは踏み込めず、従ってあるべき都市や都市計画、都市的生活様式の姿は、なかなか具体的に描ききれていないことが指摘できる。
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